【読書】大切な人の死が繋げる未来ー住野よる著・君の膵臓をたべたい

先日、出かけた帰りにふと立ち寄った書店で、強烈に目を惹かれる小説を見つけました。その本は、「君の膵臓をたべたい」。

膵臓を食べるって、何かのオカルトか、宗教か。はたまた、弱肉強食の世界を語っているのかと思ったけれど、全く違っていました。そこにあるのは純粋で人間らしい心の動きと、生きていく強さでした。

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正反対の人間が出会った瞬間

この物語は、病に侵されあと1年しか生きられない女子高校生・山内咲良と、そのクラスメイトである男子高校生が織りなす人間物語。

偶然、僕が病院で拾った1冊の文庫本。タイトルは「共病文庫」。
それはクラスメイトである山内桜良が綴っていた、秘密の日記帳だった。
そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて――。

病を患う彼女にさえ、平等につきつけられる残酷な現実。
【名前のない僕】と【日常のない彼女】が紡ぐ、終わりから始まる物語。(Amazon書籍紹介ページより)

男子高校生の目線で書かれている本書のなかに、クライマックスまで彼の名前は出てきません。偶然、それまで何の関わりも持ってこなかった咲良が病気であることを知り、そこから2人の不思議な関係は始まっていきます。

クラスの人気者である、明るい性格の咲良と、友達を持たず一人で本を読むような目立たない存在のクラスメイト。咲良のペースに彼が巻き込まれていくうちに、彼の世界や内面も変化を見せていきます。

タイトルにある「膵臓をたべたい」という表現は、この2人の会話の仲によく登場します。そして、物語を締めくくる重要な言葉でもあります。膵臓を患っていた咲良。そして「膵臓をたべたい」という言葉。一番最後に出てくるその言葉の中にあるのは、オカルトでも宗教でもなく、純粋な彼の想いなのです。

他人と関わるということ

咲良と関わりを持つようになるまで、【地味なクラスメイト】だった彼。それが、たまたま咲良の病気を知ったことから【秘密を知ってるクラスメイト】へと変化します。家族以外、誰にも話していなかった咲良の真実を唯一知る人。それが、彼でした。

他にも仲の良いひとはいるであろうに、自分をたくさんのことに付き合わせる咲良を、最初は訝しげに思っていた彼の心は、徐々に変化します。初めて人と過ごすことを「楽しい」と感じたり、冗談を言い合えることに「喜び」を感じたり。そしてときに、自分がいかに他人と関わってこなかったかということに気づいたり。

戸惑いながらも、迷いながらも、彼は他人と関わるということを経験していきます。誰とも関わらなくて良いと思っていた彼は、自分の中にある本当の想いに気づいていくのです。

 

 

きっと私たち誰もが、他人と関わりたいと思っているはず。家族、友人、彼氏彼女、人の存在を求めないことなんて、生まれてから死ぬまでないのかもしれません。

 

死を受け入れる

咲良の最期は、思ってもみない形で訪れます。咲良の死をうまく受け入れることのできなかった彼は、数日が過ぎてから咲良の家を訪れます。そこで、彼女がずっと綴っていた文庫本「共病文庫」のページをめくります。

そこに書いてあったことは、出会う前のことと、出会ってから過ごした日々のこと。そして…。

それを読んだ後に、溢れ出る感情。初めて、止めることができなくなった感情。誰かに受け入れられるということが、認められるということが、必要とされるということが、どれだけ嬉しいことか。

嬉しかったんだ。

届いていたこと、通じていたこと。

彼女が、僕を必要としてくれていたこと。

僕が、彼女の役に立てたこと。

嬉しかった。

 

人として初めて、心を通わせることができた相手。それを教えてくれた彼女は、感謝を伝えるべき彼女はもうーーー。

 

 

私たちは、自己承認の欲求を捨てずには生きていけないと思います。親には愛されたいし、誰かを好きになれば同じように想って欲しいと思うし、社会に出れば社会人として認めて欲しい。自分じゃない誰かに認めてもらえるから、自分という人間の存在価値を知ることができる。

それを果たして、私たちはどのくらい意識しているでしょうか。当たり前の日常の中にもそれはあって、認めてもらえることも「当たり前」になっているのかもしれません。

相手がいるからこそ認めてもらうことができる。相手がいるからこそ、認めることができる。互いに受け入れ、必要とすることができる。それが本当はとても尊くて、あたたかくて、貴重なんだってことを、思い出させてくれました。

 

 

 

今日のまとめ

タイトルのインパクトに反して、最後に泣きそうになってしまいました。最後に「彼」の名前が明かされるのですが、それによって、ただのクラスメイトだった彼が、本当の意味で人間らしく生きられるようになったように感じました。

人との交わることのあたたかさと、大切な人の死がもたらすもの。ただの泣ける話ではないインパクトある本書、心揺さぶられます。

 

 

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この記事を書いた人

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当ブログの管理人:小松亜矢子です。

フリーライター/元ナース/元うつ病患者。福岡県出身、横須賀市在住。

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